2018-07-25
Column
6月5~6日に開催された「宣伝会議インターネット・マーケティングフォーラム 2018」。デジタルマーケティング業界キーパーソンによる最先端の施策の紹介や、マーケティングテクノロジーに関する今後の展望など、様々な議論が交わされました。
そのなかで、当社も「AIを活用した、新たなコミュニケーション施策」をテーマにセッションを開催しました。前半は、当社 アドテクノロジー事業執行役員 谷本秀吉をメインスピーカーに、マーケティングAIプラットフォーム「VALIS-Cockpit」におけるデータの可視化・分析から効果検証のサイクルについての解説と、DSP「Logicad」やプログラマティック動画「Logicad Video Ads」を用いた事例を、谷口考志(商品企画部シニアディレクタ-)とともに紹介しました。後半は、ソニーマーケティング株式会社 橋本好真氏を交え、マーケティングパフォーマンスの可視化と追求をテーマにセッションを行いました。(敬称略)
谷本:
本日は、AIを活用したさらなるコミュニケーションツールについてお話したいと思います。
当社(以下SMN)は、ソニーグループで培われた技術を要したマーケティングテクノロジーカンパニーです。おかげさまを持ちまして、昨年対比で高水準の成長を遂げています。
主力商材である「Logicad(ロジカド)」は、私どもの培った技術を用いた国産のDSP[*1]で、特徴は3つとなります。
1.技術力
ビッグデータを高速に処理する技術やAIの領域に特化した技術を備えており、広告主様のパフォーマンスに大きな影響を与えることができます。
2.信頼性
昨今のアドベリフィケーション問題から業界でも多く議題に上がっていますが、当社ではいち早くこの領域への開発および投資を続けており、今後も強化していく予定です。
3.運用力
AIや技術だけではなしえない広告のパフォーマンスの領域において、当社のエキスパート人材がきめ細かいチューニングを日々行っています。
「Logicad」はフルファネルに対応したソリューションです。
アッパーファネルやミドルファネルといった認知、興味・関心層に対しては、様々な広告メニューを用意しています。当社独自のソリューションですと、テレビ視聴者ターゲティングや、テレビCMリアルタイム連動型広告が好評で、多くの需要をいただいています。
ローファネル(比較・検討/購入・申し込み層)に関しては、リターゲティング、ダイナミッククリエイティブが好評です。
ここでいくつか、最近のトピックスをご紹介します。
1つ目はダイナミッククリエイティブの、億単位のフィードに対応した大規模フィードのソリューションです。国内のECサイトすべてに対応できる大規模なデータフィードを我々で保有し、すべての広告主様に提供可能となっています。
2つ目は、ロックオン社が提供している国内最大手の広告効果測定ツール・アクセス解析ツール、「アドエビス」とのデータ連携を昨年10月に実現しました。
広告主様が固有でお持ちのユーザーセグメントに応じたターゲティングを「Logicad」で実現することができます。開始以来大変好評で、すでに100件以上の申込みをいただいています。
3つ目は、ECの広告主様に好評を頂いている「ROAS最大化エンジン」です。当社が用いるAIの技術によって、ユーザーのポテンシャル、予測購入金額、コンバージョン確率を推計し、結果的に広告主様のROAS最大化に貢献しています。
ここからは今日の本題、新規顧客の開拓の新たな施策についてご紹介します。
リターゲティングは、今も最も効果的な広告手法のひとつですが、新規顧客獲得の拡大にはつながりません。
それは、潜在ニーズを持つ新規顧客の獲得は非常に大きな課題であるにもかかわらず、顧客基盤の増加を図る有効な手法を見いだせていない現状があるからだと思います。
そこで、当社はマーケティングAI「VALIS-Engine」を搭載する、マーケティングAIプラットフォーム「VALIS-Cockpit」を開発し、昨年の12月に提供を開始しました。
「VALIS-Cockpit」は人間の直感だけではなく、AIが大規模なデータを分析・可視化し、それを「Logicad」においてターゲティング活用することが可能となっています。
これにより、マクロな戦略的判断は人間がAIのサポートのもと行い、ミクロな判断はすべてAIに任せることによって、マーケッターの皆様の生産性向上に貢献できると考えています。
「VALIS-Cockpit」を導入することで、様々なユーザーの行動や特性を分析することが可能となり、ユーザーインサイトを新たに発見することができます。
改めて整理しますと、コミュニケーション戦略シナリオの作成や新規ユーザー獲得に貢献する「VALIS-Cockpit」は、「Logicad」で潜在顧客へのターゲティング配信を実行することも当然ながら、ユーザーインサイトの発見によって、新たな施策提案が可能になっており、コンテンツマーケティングやリスティング広告のタイトル、ディスクリプションの最適化、ランディングページの最適化、SEOのキーワード選定にも貢献できるソリューションだと考えています。
ここからは、アッパーファネルおよび興味・関心層のミドルファネルに対してアプローチできる「Logicad」のソリューションについて特徴的なものを紹介します。
当社の谷口にバトンタッチしたいと思います。
谷口:
まずは、テレビ視聴量と広告効果の関係性を示したデータについて紹介します。
こちらは、「ライトビューアー」と呼ばれる1日平均30分~2時間未満のユーザー、「ヘビービューアー」と呼ばれる1日平均4時間以上のユーザーにクラスタ分けをしたものです。
1つ目は、「テレビCMをよく見るほうだ」と回答している割合が、ライトビューアーにくらべ、ヘビービューアーのほうが多い結果となっており、“テレビCMの認知効果は非常に高い”ことがわかります。
2つ目が、ヘビービューアーのほうが「広告は買い物をする際に大いに役立っている」、「インターネット上の広告をクリックすることがよくある」と回答をしています。認知だけではなく、“興味関心や購買行動といった点でも動画の効果は高い”という結果が読み取れます。
この結果から、テレビ視聴量データが、広告効果に大きな影響をおよぼすことがわかります。
そこで当社では、テレビCM、テレビ視聴量データを活用したターゲティングを用意しています。
1つ目は「テレビCMリアルタイム連動型広告」です。
テレビCMが流れたタイミングで、視聴者へリアルタイムにネット広告でアプローチできるソリューションです。連携先であるゼータ・ブリッジは、リアルタイムでCMを自動認識し、データベース化するシステムを持っています。自社のテレビCMが放映されるとほぼ同時に、当社「Logicad」に情報が流れてきます。当社はそのデータを受けとり、地域・性別などセグメントされた視聴者へのターゲティング広告の配信を開始します。
これにより、テレビCMとWEBの接触重複者への理解促進につなげることが可能となります。
2つ目は、テレビ番組視聴やテレビ視聴量をもとにターゲティングを行う「テレビ視聴者ターゲティング」です。ビデオリサーチ社と提携したサービスで、同社が保有するテレビデータとWEBのデータを統合したデータソリューション「VR LINC」を通して提供しています。そこに、当社の人工知能「VALIS-Engine」を活用し、ユーザーを拡張後、広告を配信します。これにより、1日平均4時間以上テレビを見るヘビービューアーに対して、理解促進をつなげられます。
また当社では、動画を配信することが、更なる理解促進につながると思い、2つの動画広告フォーマットを用意しています。
1つ目がインリード広告。ニュースページやファッションサイトなどのプレミアム媒体への広告配信が可能な動画フォーマットです。記事中、記事下に掲載が可能で、高いセグメンテーションを可能としています。
2つ目が、インバナー広告。既存のバナー枠に広告配信ができるもので、比較的単価が安く、多くのリーチを目的とする広告配信です。
本日の話をまとめますと、テレビCMやテレビ視聴量データを活用した動画配信を行うことで、高い理解促進効果を得ることが可能です。
~ミニトークセッション~
「マーケティングパフォーマンスの可視化と追求」
後半は、谷本が聞き手となり、ゲストのソニーマーケティング株式会社 橋本好真さんとトークセッションを行いました。
「マーケティングパフォーマンスの可視化と追求」をテーマに、橋本さんの実践的な事例も踏まえながら、お話を伺いました。
まずはTopicsとして、「1stPartyデータの活用および、DMP[*2]からCDP[*3]への移行について」「GAFAに対しての見解」「レギュレーションとデータの利活用間で起こるジレンマ」の3点、橋本さんの見解をお聞きしました。
「1stPartyデータの活用および、DMPからCDPへの移行について」のパートでは、“クラウド上でユーザーの行動情報を蓄積しやすい環境にし、ユーザー像をいかに立体化させていくかがポイント”とのお話がありました。また、「レギュレーションとデータの利活用間で起こるジレンマ」のパートでは、個人情報とそうでない情報の住み分けを法務担当部署と頻繁に連携を取りながら進めていることを挙げていらっしゃいました。
続いては橋本さんがご用意した資料をもとに、現在の取組みについて紹介がありました。
紹介の合間に、谷本からいくつかの質問を投げかけながら進めるディスカッション形式で行いました。
会社説明からはじまり、橋本さんご自身の業務内容や、どのようにデータを活用されながらユーザーのインサイトを深めていくのかについて語っていただきました。
橋本さんがお話の中で強調されていたのが、「データをベースにユーザーの態度変容を把握し、顧客インサイトを行動から逆算する」というもの。実際にユーザーの考えていることを把握するのは難しいことですが、行動データからその行動の目的を読み解き、ユーザーのインサイトをとらえていくという考え方です。
その中で動画については「興味というものをWEBサイト上でとることができるので、広いリーチで潜在的な見込ユーザーを誘導するためのアテンションとして活用できればと」とおっしゃられていました。
以上
*1 DSP(Demand Side Platform)
広告主の広告効果の最大化を支援する広告配信プラットフォーム
*2 DMP(Data Management Platform)
大規模な広告データを一括管理するためのプラットフォーム
*3 CDP(Customer Data Platform)
顧客(ユーザー)1人ひとりの属性データや行動データを収集・蓄積・統合するためのプラットフォーム
ソネット・メディア・ネットワークス株式会社
経営企画室 広報担当